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セッション4:科学技術と公共圏
4-3
政策の失敗軌道転換のために:
日本の高レベル放射性廃棄物処分政策における「構造災」をめぐって
寿楽 浩太(
東京電機大学)
発表者は過去
2
回の本学会大会で日本における高レベル放射性廃棄物(
HLW
)の処分問題に関して、一見すると政策の失敗軌道が修正されつつあるように見えながら、実際には松本三和夫が言う「構造災」としての特徴が残念ながら維持、再生産されている可能性がなおも継続していることを報告してきた。
本報告では、上記の仮説に基づいて昨年度から報告者が開始した質的調査研究の成果を踏まえ、以下の3つの事柄を報告する。
まず、質的調査(関係文書の内容分析、関係者への聞き取り)の結果を報告する。すなわち、この問題に関して何らかの「進展」が見られる諸国では、早期に(報告者がその重要性を主張してきた)「価値選択」の議論を経て原則や方針についての明確な合意を得る努力や、内外の失敗経験を含む専門知(そこには学術的な知だけではなく、実務家や政策担当者が有する実践的な知ももちろん含まれる)を常に積極的に収集し、そこから教訓を得て自らの政策や事業に反映させるための様々な工夫が認められるが、日本の政策形成・実施過程にはそれが決定的に欠けていることが改めて明らかとなった。
続いて、昨年から本年にかけての日本における
HLW
処分問題に関する政策軌道は、引き続き同じ轍を踏み続けており、上記の問題が存続していることを政策上の動きを解説して確認する。
最後に、日本においてさらなる「構造災」の継続・発生を絶ち、政策の失敗軌道を修正するための方策を検討する。ここでは、カナダの政治学者であるジュヌヴィエーヴ・フジ・ジョンソンが提案する「倫理的政策分析」と「構造災」概念、そして専門知と民主主義の両立という、いわゆる科学社会学の「第
3
の波」論の中心的論点を接続することを試みる。多元主義的な立場に立って複数の政策・技術選択肢を提示しながら、「価値選択」を含む骨太な熟議を尽くしながら政策を漸進的に彫琢する立場への転換の方途を探りたい。