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セッション4:科学技術と公共圏
4-1
NHK非受信装置にまつわる法・技術・社会
掛谷英紀(筑波大学)
筆者らは
2014
年に
NHK
のみ受信しないアンテナフィルタを開発し、ネット上で
販売を始めている。この装置の開発には、種々の法的・社会的問題が関係する。
NHK
は地デジ技術の特許を多数所有しているため、知財権の制約により
NHK
が映らない地デジ対応テレビを国内で販売することはできない。一方、放送法
64
条には「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」とあり、条文を文字通りに読めば、アンテナレベルで
NHK
を受信できなければ、
NHK
との契約が必要ないと解釈できる。アンテナ技術は歴史が古く、テレビのように知財権の制限を受けないことから、
NHK
のみ受信しないアンテナフィルタ装置の製造・販売は可能である。こうした法の隙間を狙う行為には「脱法行為」との批判もあるが、
Amazon
のレビューをはじめとするインターネット上の反応は、この装置開発を支持する意見が大半を占めている。その背景には、
NHK
の現行の受信料制度に対して、多くの人が不満を持っていることがある。
NHK
受信料取り立ての強引さや、
NHK
を見ているのに受信料を払っていない人が多数存在する点は、しばしば批判の対象となる。また、公共放送としての
NHK
の報道内容・報道姿勢への不満、しばしば発覚する
NHK
の不祥事も受信料不払い運動を誘発している。もちろん、こうした組織や制度の問題は、本来は立法府によって取り扱われるべきものである。しかしながら、
NHK
の受信料制度に対する不満は古くからあったものの、長い間放置されてきたのも事実である。本発表では、まず
NHK
のみ受信しないアンテナフィルタの原理について
述べ、この簡単な技術がなぜ今まで実用化されなかったかについて考察する。続いて、このアンテナフィルタの法的・倫理的正当性について、法律の歴史的側面から検討を行う。最後に、このアンテナフィルタに対する社会的反応を分類し、それぞれの意見について分析を行う。