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セッション3
:
病・医療・生物医学
3-3
薬物効果のループ-西ハンガリーの治験施設支援機関の事例から-
モハーチ・ゲルゲイ(大阪大学)
臨床試験(治験)とは、開発中の医薬品などを病人と健常者の両方に投与し、新薬の安全性と効率性を評価する仕組みである。一方では、実薬と偽薬を比べる実験の場であるが、他方では、病気を患っている人々を治すための実践でもあり、その上で理性と感性を媒介しているプロセスだと言える。つまり薬の効果を比べることは、エビデンスを求める治験の最大の目的であると同時に、被験者同士の苦痛をつなぎ、共有する経験を生み出していく。患者が自分の症状に対する感覚を研ぎすませば研ぎすますほど、医師及び企業が薬の効き方の論理を突き止めることができるのである。
本発表では、ハンガリー西部にある小規模臨床試験センター(
DRC
)の事例から、医師と患者、治験コーディネーターが、どのように錠剤や疾患カテゴリーの多様性に対処しているのかを描き出す。
DRC
では、糖尿病と骨粗しょう症に関する研究および治療を中心に、
1990
年代前半の市場解放から外資系製薬企業と周辺の地方病院とのネットワークを徐々に拡大し、多種多様の患者(被験者)を集めることができるという施設として地位を確立してきた。
そこで諸海外市場に向けた新薬の開発に関係する一連の出来事の一環として、新たな化合物のさまざまな治療効果が、少数であるが多様な患者集団を対象に比較されている。効果的な治療(薬)は、人間の多様性および疾病分類の間を絶え間なく循環しているループに現れ、そこでは科学技術社会論の方法が、探求の科学的モードと人間学主義的モードとの間に確立された境界を乗り越えていく。
STS
および臨床試験の両方において欠かせない手段である《比較》は、多数の分離した民族・文化・遺伝的単位間で行われる測定行為ではなく、もの・身体・世界を生成していく関係性であるという点を明らかにするのもの本発表の目的のひとつであろう。