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セッション2
:
事故・災害
2-2
福島第一原発事故後の対策をめぐる批判-改良サイクル
立石 裕二(
関西学院大学)
原子力発電(原発)事故やそれに伴う放射線被ばくをめぐっては、「事故のリスクは大きく、放射線は危険だ」とする原発反対派と、「リスクは小さい」とする原発推進派との間で、長い間論争が続けられてきた。
2011
年に福島第一原発事故が起こると、反対派は自分たちの指摘に事業者が対応してこなかったことが、事故の発生・拡大につながったと主張するようになった。それとは逆に、推進派と反対派の間の膠着した対立が、原発の安全対策を進める上で障害になってきたという指摘もある。新しい対策の導入が原発の危険性を訴える材料として使われることを懸念し、事業者側が対策を躊躇する面があったというのである。実際のところ、論争の中での批判はリスクの低減に貢献してきたのだろうか。
この点を考えるために、本報告では「批判-改良サイクル」という概念モデルを導入したい。これは、1)外部のアクターが問題点を指摘する→2)事業主体の内/外で認知・共有される→3)事業主体が対策をとる→4)外部のアクターが対策の効果を検証し、さらに別の(より高度な)問題点を指摘する→…という循環的なプロセスをさす。実際にリスクが減ったかどうかは検証困難だが、批判に対する対応の有無、その結果としての争点の変化の有無は、社会学のアプローチで明らかにできる。批判をめぐって現実に起きていることは、この理念型的なモデルから多少とも外れていると考えられる(情報が足りずに具体的な批判ができない、要求が極端すぎて対応しようがない、せっかく指摘しても無視されてしまう、対策を取っても効果が測れない、など)。それでは、どのような局面、争点で外れ方が大きくなるのか。それはなぜなのか。このサイクルから外れることは、各アクターにとって、さらには問題の帰趨にとって、どのような意味をもつのか。福島第一原発事故後の論争・対立を事例として考えていきたい。